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理事長あいさつ

一般社団法人 日本病態情報医学会
理事長 河盛 隆造
理事長 河盛隆造

 わが国は、国民皆保険制度のもと、国民の誰もが容易にいつでも高度な医療サービスを受けられる数少ない国の一つであり、男女共に平均寿命が世界一の長寿国となるなど、医療システムは極めてよく機能しているように見えます。
 ただ、その一方で、他国に類を見ない急速な高齢化の進行、食の欧米化に伴う脂肪摂取量の増加とモータリゼーションによる生活習慣病の増加等により、医療費が増大し、健康保険財政は危機的状況を迎えつつあります。これを補うための度重なる保険料の値上げ、患者自己負担額の増加は医療機関を受診する患者の減少を招き、診療報酬の引き下げと相まって、医業収入を減少させ医療機関の経営を圧迫しています。治療にのみ依存した現在の医療サービスでは、やがて健康保険財政は破綻し国民皆保険制度は形骸化することが危惧されます。そうした中で、本年より、厚労省の旗振りで特定健診、特定保健指導が始まるなど、我が国の医療もいよいよ予防医療重視の姿勢に大きく舵を取った感があります。今後、疾病の予防・早期治療は益々その重要性を増すと思われます。

 一方、わが国の医療機関は、こと予防医療の分野において、あまり存在感を発揮できない状況が長く続いてきました。糖尿病や高血圧、高脂血症といった生活習慣病の増加が深刻な問題となるなかで、たとえば糖尿病者1620万人(境界域者を含む)のうち、医療機関に定期通院する者は300万人足らず(平成14年厚労省調査)に留まっています。既に4年後の平成18年の厚労省調査では、糖尿病者(境界域者を含む)の人口が1,890万人にまで増加したことが報告されており、後顧に憂いを残さないためにも、早急に軽症患者が医療機関を定期受診しやすい環境作りを行う必要があります。

 医療機関が主導して予防医療を推進するためには、まずは多くの軽症患者や未病者に病者意識を持たせ、疾病予防の重要性を正しく理解させることから始める必要があります。一方で、その疾病予防に向けた意識の高まりが誤った方向に逸れてしまい、怪しげな民間療法に走ったり有害な健康食品で健康被害を受けたりしないように、我々医師が監視することが必要となります。そうしたなかで、一般社団法人 日本病態情報医学会は、開業医の先生方を中心とした地域医療機関における本格的予防医療の推進に向けて、1)医療機関における効率的な予防医療実践を可能とする臨床システム(予防医療ツール)の提供(評価・研究)、2)特定健診・特定保健指導の効率的運用に向けたシステム研究と実践的サポート、3)市民セミナーの開催など一般市民向け啓発活動、4)研究会、学術講演会の開催等、医療従事者向け啓発活動、などを行って参ります(「日本病態情報医学会 概要」ご参照)

 特に、本学会が予防医療ツールとして注目しているのは、従来の食事療法、運動療法に加えて、安全性と有用性に関わるエビデンスを有する健康補助食品などを、医師の管理下に患者管理目的に上手に活用することです。これまで、健康食品に関しては、悪質な輸入業者が健康被害を引き起こしたり、通院中の患者が医師に隠れて(場合によっては医薬品を自己判断で中断して)摂取したりと、何かと問題ばかりが目立つ状況にありました。そうした中で、昨年1月より、大阪府内科医会(医師会員900余名)では、安全性と有用性に関し十分なエビデンスを有する食品だけを医師よりなる専門家委員会が選別し、患者に利用させる試み(市販後調査)が始まりました。これまでに7000名を超す通院患者(軽症者、未病者)が、従来の食事療法、運動療法などに加えて、医師の認知下で健康補助食品を使用したところ、未病者・軽症患者の病者意識が高まり、(特に薬の処方を受けていない患者の)再受診率の向上(通院中断例の減少)、臨床検査値の改善など、プラセボ効果も含めて期待を上回る結果が報告されています。同様の医療機関における食品市販後調査は、今年4月から、神奈川県保険医協会でも開始されました。

 一般社団法人日本病態情報医学会では、上述の大阪府内科医会などの成果を参考に、臨床の第一線でご活躍の先生方の協力を得て、医師と患者が向き合うなかで健康補助食品等が安全・安心に使用される環境を構築するとともに、調査等で得られた情報を、適宜、患者と主治医の先生に発信することで、患者を悪質な健康食品の健康被害等から守ります。本学会は、そうした努力を通じて軽症患者の医療機関定着率を高め、より多くの患者が医療機関において予防医療サービスを享受できる体制を作りたいと考えています。

 何卒、先生方各位のご理解、ご協力を賜りますようお願い致します。

 平成20年6月吉日